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牧師・漫画家・ミュージシャンの松本太郎のブログ


by qpqp1999

メリークリスマス

 メリークリスマス
2015年 クリスマスの夕
礼拝説教 ルカ福音書2章1節~21節
 
 今日、この礼拝に参加している方ならお解りのことと思いますが、12月24日はクリスマスイブであって、
<聖降誕際>
 ではないということです。
 この、新生ルーテル教会では、毎年、24日と25日、両日共に、
[クリスマスの夕]
 と題して、礼拝し、お祝いをしてきました。
 今年も両日共に行われます。それに従って私も説教準備にあたり、福音書に記されているクリスマス物語、即ち、マタイ福音書、ルカ福音書をとりあげようと思います。
 今夜はルカ書です。ローマ皇帝から人口調査をするようにという設定でイエス・キリストが、どうやら家畜の洞窟で産まれたらしいという所です。
 日本国では西暦という暦が使われている。これはAD何年という事なのですが、このADというのはラテン語で
「主の年」
 という意味です。つまり、イエスキリストの生誕を0年にして西暦は作られました。
 そういう歴史的な視座を据えて、書かれたのがルカ福音書です。いかにも、歴史に主は働かれたと、言わんばかりです。
「全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た」
 と書かれています。アウグストとは古代ローマ帝国の初代皇帝のガイウス・ユリウス・カエサル・オクタヴィアヌス・アウグストゥスという人の事です。
 戦乱渦巻く世の中を制圧したことで、
「パクス・ロマーナ ローマの平和」
 を実現した人として、神として崇められた人です。
 福音書を書いたルカはこの大人物を利用して、イエス・キリストの誕生物語を歴史に関わる大事件として書いているのです。
 「クレニオがシリアの総督であった時」
 とありますが、このクレニオというのはローマ帝国の官僚であったキリニウスの事です。
 この頃、既にイスラエルという国はローマ帝国に分割統治されていたということです。
この人口調査については諸説ありますが、ルカが書きたかったのは、この
「ローマの平和」
 と唄われたアウグストゥスの命令の中、大変な思いをした、ある夫婦の事を時代の流れに大きく影響もたらした。事実もたらしていると言う事を書きたかったのでした。
 マリア伝承というのとヨセフ伝承というのがあって、ルカ書では、マリア伝承が用いられていて、ヨセフはほとんど登場しません。
「ダビデの家系」
だったくらいしか、出てきません。じゃあヨセフ伝承ではどんな話しが聖書で展開されるの???と興味を持った方は、明日の25日のクリスマスの夕にもお越しください。明日はその話しをします。
 ただ、今日、私のメッセージを聴く皆さまも明日聴く皆さまも同一なのは、この、イエス・キリストの誕生が
「汚れの中での誕生」
 だったというモチーフです。ルカもマタイもお互いを知りません。今みたいにスマホもなければ、ガラケーもインターネットも無かった。お互い全くしらない間柄だったのです。それにも関わらず、この二つの書簡のイエス・キリスト誕生物語に奇跡的に共通している事がある。
 それは母マリアが夫ヨセフと関係を持たない前にイエス・キリストを妊娠したということなのです。そ
 当時のユダヤ教の社会では婚約は結婚そのものを意味しました。そして、婚約してから一年は夫婦の関係をしてはならない。それに違反した場合には石打ちにて死刑にする、と言われていたのでした。
 ルカ書では、この大変な義務を負わされたマリアの視線から福音書が書かれています。いつ、どこで、どうやってヨセフが覚えもないお腹の子供を了承したかはどこにも書いてありません。
 でも、それは起こった。それがルカ書におけるイエス・キリスト誕生のインパクトです。
 当時のユダヤの社会は早婚で、女性は12歳くらい、男性は16歳くらいで結婚する世の中でした。それが、婚約の期間内に妊娠してしまった。これを、
「奇跡」
 という美談にしてしまうのは簡単です。ですが実際はそうではなかったでしょう。この
「処女降誕」
 が史実ならば、私たちは浮かれてクリスマスをお祝いしている場合ではなくなるのです。
 つまり、イエス・キリストの
「処女降誕」
 というのは、誰の子供か解らない子供が産まれたという事に他ならない。
 史実であるならば、マリアは
 「売春を余議なくされていた少女」
だったかもしれない。または
 「レイプの犠牲者」
であったかもしれない。
 そこまで、読みこんだ上で、この処女降誕というのは読まれるべきなのです。
 つまり、
「イエス・キリストは栄光に包まれて産まれたのではなくて、汚れの中に産まれた」
という事なのです。そして、
ルカの目論見通りに、イエス・キリストの誕生説話は世界中に広がることになりました。
 なにしろ、世界一のベストセラーが聖書なのですから。
 そして、このイエス・キリストの誕生物語を確実に貫く強いメッセージが書かれる。
 羊飼いたちに天使が現れて、救い主、イエス・キリストの誕生を告げ、祝いに行けと言う。
 どうして野宿している羊飼いが、最初のお祝いに招かれたのか。ここもルカが大いに書きたい所でした。
 羊飼いは雇われていて、夜通し羊の番をしなければならなかった。なので、
<安息日>
 の戒め、安息日には働いてはならない、というのを破らねば生活できない人たちだったのです。
 つまり、世の中から
 [罪人、汚れた者]
 として見下されていた人々でした。そういう人の前にこそ天の軍勢は現れる。
 ローマ皇帝オクタヴィアヌスまで持ち出して、この出来事の大きさを示したかと思ったら、その極端の「身分の低い」「賤業」の羊飼いたちだけに、イエス・キリストの救いの誕生が告げられる。決して、あらゆる意味で、裕福に生きて、富に浸かりきっていた人たちではなかった。
 これが、福音書記者ルカが書きたかった事なのです。
 今ここで、この羊飼いたちのように、生きていくために、世の中から踏みつけにされているような人、そのような人にこそ、クリスマスのお祝いは主から与えられることを信じ
 決して現状の苦しみに撃ち負かされることなく、逆にこの苦しみこそが救いであると信じることを聖書は示しているのです。
by qpqp1999 | 2015-12-24 16:56 | ネイルアート