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牧師・漫画家・ミュージシャンの松本太郎のブログ


by qpqp1999

天皇の料理番その2

 天皇の料理番その2
 私の父は、宮中の料理番していた秋山徳蔵さんと関係するフランス料理の料理人になったのだが、その料理人になる最初の原因が「太平洋戦争」での徴用だった。父は大阪の日東町に住んでいたが、この徴用で父は呉海軍工廠で働かされることになった。そこでは回天という非人道的な特攻魚雷の座金を作る仕事をしていたんだそうだ。ちょうど戦艦大和がドック入りしていて左右の副砲取り除いて対空砲を設置しているところだった。
 そんなある時、停泊している潜水艦のデッキで、丸々と太った水兵が椅子に座ってジャガイモの皮をむいているのを発見したんだむー。
 戦時中で食糧不足な時代に、なんであんなに太っている人がいるのだろうとティーンエイジャーの父は考えたんだそうだ。その答えが「海軍主計兵」だった。
 陸軍は炊事係がいないのだが、海軍は軍艦に乗る。すると炊事係が必要になる、これが主計兵(メシタキ)だったのだ。それどころか、軍艦の主計兵は「メシタキ」と言われながらも和洋中は勿論、フランス料理もこなさなければならない炊事係というよりは料理番であらねばならない場合もあった。それは軍艦は海外、西洋にも行く、その時にお客さんを招いた時に恥かかないように第一級のフランス料理出さねばならない。たまたま、父の入隊時の成績が良かったので父は「メシタキ」ではなくフランス料理もこなせる水兵になったのだった。
 前夜、父は当時、結核だったのに、軍医がGOサイン出してしまったので、嫌でも軍隊に入ることになった。それならば、志願しようということで、検査の後の足で、夕方、もう事務仕事を閉めようとしている海軍に行ったのでした。ちょうど仕事をかたずけている途中の受付の兵士は海軍に志願してくるティーンエイジャーを歓迎したのだった。
 そして、父は、食うに困らない「主計兵」に志願した。そしたら係の兵士が
「え?」
 という顔をして
「どうして主計兵なんだ」
 と訊いてきた。父は焦ったそうだそれでも、主計兵の仕事は料理だけではなく、事務だということも知っていたので、
「私は六人兄弟の長男でして、家庭のことを色々やりくりするのに長けていまして・・・」
と説明したら、係の兵は笑顔で
「そうか!俺も主計兵だ、いいか、主計兵はこういう仕事もするのだぞ」
と言ったそうだ。
こういう訳で、父の料理人人生は幕をあけることになったのだった。ただ、その天皇の料理番たる秋山徳蔵さんと関わるまでは、まだまだずっと先の事だった。
by qpqp1999 | 2015-06-03 19:12 | グルメ