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牧師・漫画家・ミュージシャンの松本太郎のブログ


by qpqp1999

性指向

性指向その一
 私の性同一性障碍の症状の発見は実は早かった。小学生の入学式のことだ。私はいつもの通りに女の子の列に並んだ。そしたら先生が
「あなたはこっちだよ」
と言って、男の子の列に並ばされた。それが最初だった。それ以降、私は自分が何かいけない事を考えたり、感じていたりするのではないかと思い出して、自分の性自認と体や社会的存在の違和感を無意識のうちに消し去るようにするようになった。そうすることで、世の中とうまくやっていけると考えたのだ。
 しかし、最初のクライシスは中学入学で訪れる。小学生の時は髪の毛を長くして、修学旅行の時とかは旅館の人に
「ああ、あなたはこっちだよ」
 と言われて、女の子の部屋に行かされた事があって。内心実はとても嬉しかったものだ。
 ところが、私の家庭は固いキリスト教の牧師家庭、女の子になりたいなんて思ってもみては罪になると考えさせられていて、抑圧される状況にあった。事実、
「性同一性障碍」
という言葉が世に出てくるのは私が30歳くらいになってからで、さすがの日本ルーテル神学校の最終学年の「性」について学ぶ授業でも精々、「異性装」が取り上げられる程度で「性同一性障碍」については一切取り上げられることは無かった。学校に責任はない、その当時、まだ「性同一性障碍」という言葉すらこの世に存在していなかったのだ。
 そんな私の人生を狂わせたのが性指向だ。性指向というのは、たとえば「男性が性愛対象」「女性が性愛対象」あるいは「男性も女性も性愛対象」というもの、もっと言うなら「人間以外も性愛対象」というのまである。だが、多くの人類は大抵の場合、男性は「女性が性愛対象」女性は「男性が性愛対象」であるので、そうでない人たちは、どうやっても「セクシュアルマイノリティー」になってしまうのだ。
 そこで、多いのが生物学的には男性の「性同一性障碍」の人で「性愛対象が女性」の場合、かなり悩むことになる。私もそうだった。だから、神学生の頃私はロックバンドをしていて、多くの女性からキャーキャー言われていたが、誰とも「彼女・彼氏」の仲になることはなかった。というか、できなかった。自分は自分の性自認に対して違和感を感じているのに「性指向が女性」というのはどうなっているのかというカオスの中にいたのだ。
 今ではホルモン治療も進み、後は性別再判定手術をするだけになっている。周りの人たちも多くの人が私のことを「生物学的には男性」だが「性自認は女性」だと認識してくれる人が段々と多くなってきた。おかげで、ホルモン治療で発現した女性化乳房もあまり隠さないで済むようになったし、髪の毛を長くのばしていても、社会的に非難されることは無くなった。
 もう歳が歳なので、今更パートナーをああだ、こうだ言う場合ではなくなっているので。きっと生涯独りでいるだろう。意外にこれで、「性同一性障碍」のMTFとしてはモテていて、男女の差異無くよく思ってもらうことが今でも少なくない。とくにネット端末上のMTFやTBのSNSでは無視を通さなきゃいけないくらい。お友達申請が多くて、最初は丁寧に断っていたが、今ではもうスルーするようにするしかなくなってしまった。
 次回はそんなSNSで特に発達している。セクシュアルマイノリティーの実情に触れてみたい。
by qpqp1999 | 2015-02-17 19:00 | 性同一性しょうがい